IGZOが液晶にもたらすうれしい効果とは?

#001(2013/03/18)

「AQUOS PHONE Xx 203SH」はソフトバンクから3月8日に発売されたシャープのハイスペックスマートフォン。ディスプレイはもともとS-CG Siliconを搭載予定だったがIGZOに変えるという異例の決断をした。IGZOがそれだけすごい特長を兼ね備えている。出来る限り簡単に紹介しようと思う。

シャープのIGZOがスマートフォンライフを変える

スマートフォンをお買い求めになるときに電池容量は多くの人が気にしている。最近の端末では電池を大容量化しているが、それとともに高スペック化され消費電力が多くなっている。では、どうしようもないのか?

高スペックになってもスマートフォンの消費電力が一番大きいのはディスプレイである。シャープは省電力の新世代ディスプレイ「IGZO」搭載スマートフォンを発売した。

IGZOだと「通常のスマートフォンの使い方で、2日間バッテリーがもつ」と言う。言い換えれば、「電池残量を気にせずに1日十分にもつ」と言える。IGZO搭載第一弾となったドコモの「AQUOS PHONE ZETA SO-02E」の人気は特にすごい。

省電力&高精細を実現するIGZOの液晶

IGZOは酸化物半導体のことで「Indium(インジウム)」「Gallium(ガリウム)」「Zinic(亜鉛)」から構成されている。このIGZOが液晶パネルに応用された。大きな特長としては省電力だというところだろう。

その理由の1つに電子の移動度が従来の液晶より高いことが挙げられる。電子の移動度が高ければ、電流が流れやすく薄膜トランジスタを小型化できる。1画素ずつトランジスタが入っているため、トランジスタが小型ならバックライトの透過率もよくなる。従来よりバックライトの明るさを抑えることになり省電力につながる。下の図は大げさだがこんなイメージ。

  • 従来の液晶(■はトランジスタ、白い所
    からバックライトの光が通過する。)
  • IGZOの液晶(従来の液晶よりも白い所の
    面積が広い。)

また、高精細なディスプレイになると1画素の大きさが小さくなるため、よりバックライトが透過しにくくなる。よって高精細なディスプレイにIGZOはぴったりだ。下の図も大げさに描いたが、イメージはしやすいと思う。今後もフルHDの液晶が増えると考えられるため、IGZOが大活躍しそうだ。

  • 従来の液晶(光の通過する場所がとても
    小さくなった。)
  • IGZOの液晶(光の通過する場所は十分
    ある。)

液晶もエコな運転を!IGZOの省エネ

通常のスマートフォンは1秒間に60回画面の書き換えが行われている。同じ表示であってもだ。理由は、少しずつ電流が漏れているため、電圧が下がり表示を維持できないようだ。

IGZOでは電流漏れが少ないため電流を一定時間止めることができ、同じ表示なら1秒間に1回画面を書き換えるだけでよくなる。この状態を「液晶アイドリングストップ」と表現している。この間はCPUの表示部もストップしているため、驚きの省電力に貢献する。

繊細な操作で快適をお届け

IGZOはタッチ性能の良さも特長である。従来だと表示のためにずっと電流を流していたことで、ノイズが発生しタッチの感度が悪かった。

IGZOでは上記の「液晶アイドリングストップ」の状態、つまり電流が止まっているときにタッチを検出している。余計なノイズがなく細いペン先でも反応する新しい使い方もできるようになった。

シャープといえば他にも…

シャープのスマートフォンのディスプレイにはIGZOのほかにCG SiliconやS-CG Siliconがある。これらも省電力をうたっている。実は、IGZOよりも電子の移動度が高いのだ。よってIGZOと同じように省電力に貢献する液晶になる。

だったらIGZOよりもCG SiliconやS-CG Siliconを大きく推していけばいいのではないかと思うかもしれない。ただ製造工程が複雑、電流漏れが多いなどIGZOの方がメリットがあるようだ。CG SiliconやS-CG Siliconの詳しいことは今回は省略させていただく。

ちなみに、S-CG SiliconのSはスーパーである。何がスーパーかというと液晶内にメモリーを搭載しIGZOのように駆動を止めることができる。CG Siliconより省電力になったということだ。

コンパクト設計にも貢献!

最後にコンパクトに設計できるという特長を紹介する。IGZOは上記のとおりトランジスタを小型化できる。ディスプレイの周囲のトランジスタも小型化できるため狭額縁化に貢献する。

スマートフォンでは「AQUOS PHONE ZETA SO-02E」が4.9インチディスプレイで幅が68mm、「AQUOS PHONE Xx 203SH」が4.9インチディスプレイで幅が69mm、タブレットでは「AQUOS PAD SHT21」が7.0インチディスプレイで幅が110mmと持ちやすいサイズになっている。

ただ、ディスプレイと幅の関係は各社工夫をこらし、持ちやすいサイズを実現しているところもあるため、あまり変わらないと思うかもしれない。

しかし、コンパクト設計は副産物のようなものなので、狭額縁に意識をもたなくとも実現できる。その上、IGZOの省エネ×高精細×高精度タッチの特長はスマートフォンを快適に使えるため、ぜひシャープのIGZOはおすすめしたい。

最後に一言

「AQUOS PHONE Xx 203SH」が発売された機会にIGZOの紹介をさせていただいた。スマートフォンにありがたい特長を多く持っているので、ぜひ店頭で実際に触ってもらいたい。